チンギス・ハーン肖像侮辱に有罪判決

「オルドス公安宣伝・警務報道」(12月13日付)によれば、同月4日、12日、オルドス市エジンホロー旗人民法院(地方裁判所)は羅被告人によるチンギス・ハーン肖像侮辱事件の公判を開き、被告人に懲役1年の実刑判決を下した。おそらく同種の事件では初めてとなる判例であろう。被告人は判決を受け入れ、上告はしないという。

事件の経緯はこうである。2017年5月20日、羅被告人は銀川市内にある「シリンホト」ゲルレストランでチンギス・ハーンの掛け軸を踏むなど侮辱行為を行い、かつ動画をネット配信。この動画をめぐり、モンゴル民族の方々が激しく抗議し、WECHATなどで大きな話題を呼んだ。そのようなチンギス・ハーン侮辱行為は今回に限ったものではない。近年において、チンギス・ハーン肖像にビンタを食らわしたりし、顔に下半身を触れさせたり、また弓射の的にしたりする行為が頻発しており、モンゴル民族の憤慨は頂点に達していたのである。

民族間対立を引き起こしかねない今回の事件を重く見たオルドス市司法機関は『中華人民共和国刑事法』に基づき、被疑者を逮捕し、捜査を始めた。   『中華人民共和国刑事法』第249条では、民族の憎悪を扇動する民族差別罪を規定している。つまり悪質で卑劣な手段で多数にわたり扇動し、民族の公憤を引き起こし、民族感情、尊厳を酷く損なうことなどの犯罪行為に対し、三年以下の懲役、または拘留、監視ないし政治的権利を剥奪する処罰を与える規定がある。

一方で、政治的には、中国の民族政策において56民族は中華民族として概念化されており、チンギス・ハーンは民族英雄として象徴的存在となっている。『中華人民共和国憲法』で次のように規定している。

中華人民共和国は全国各民族人民が共同で築き上げた多民族国家である。平等、団結、互助的社会主義関係は確立しており、さらに強化され続ける。民族団結を維持する闘争の中で大民族主義、とりわけ大漢民族主義(漢民族至上主義)に反対し、また地方民族主義にも反対する。

中国憲法の解釈からすれば、大漢民族主義に反対しなければならない。またチンギス・ハーンはモンゴル民族の英雄だけではなく、中華民族の英雄でもあるため、その侮辱行為は民族団結を破壊し、大漢民族主義を煽ることになる。そのため今回の有罪判決は政治的意味合いも持っているのである。

いずれにしても、このような判決に対し、モンゴル民族は満足しており、再発防止に期待している。           文責:B@B