日本モンゴル植物名称万覚帳―その一(背高泡立草)

筆者にとって日本の文学、特に日本の俳句をモンゴル語に翻訳する際にいつもぶつかる難しい問題がある。それは花の名称である。日本には四季折々の花があって、俳句には季語として登場する。だからモンゴル語の花の名称はかなり時間をかけて調べないといけない。

当初はモンゴル語には花に関する語彙があまり豊かではないと思い込んでいた。しかし、それは筆者の語彙の貧弱さにすぎなかったことは、モンゴル植物名称を調べているうちに気付いたのである。モンゴル語における植物の名称は実に豊かだったのだ。日本人観光客のガイドを務めていた80年代なかば90年代初めごろ草原に咲いた花を聞かれて、「赤い花」「黄色い花」と冗談交じりに言って、「モンゴル語には花の名称はあまりない」と説明していたことを思い出すと恥ずかしい。本格的な翻訳と俳句創作を始めてから、自分の語彙力を鍛えるためにも、日本モンゴルの花の名称をもっと知るためにも身近な植物、特に道端、川辺や公園などでよく見かけるきれいな花や植物に興味を持ちはじめた。最近筆者が花の写真をよくSNSで公開するのを見て、ある友人に「100キロもの体重のある君のイメージとはぜんぜん結びつかない」と言われたほどである。

日本文学の翻訳、とりわけ俳句の翻訳、そしてモンゴル語と日本語による俳句の創作過程で、自分の知らなかったモンゴル語の花の名称を見つかるたびに、金塊でも見つけたような喜びを感じるのである。母語であるモンゴル語がもっと好きになっていく。そして母語を守るということは、日常会話をスムーズにできることだけではなく、埋もれている語彙の再発見、発掘も非常に重要であると認識するようになった。

われわれの知らないたくさんのモンゴル語の語彙が眠っている。それを呼び起こすのは我々自身である。真の母語の保護、継承は母語を意識的に使うことであり、掘り起こし、活用することであるだろう。

 

たとえば、今若干季節外れになっているかもしれないが、公園や道端にはまだ「背高泡立草(セイタカアワダチソウ)」が靡いている。モンゴル語では「ウルムトゥール」(u’rumtuul)と言う(写真1-2)。貴重な薬草である。

このコラムでは、筆者が学習したモンゴル語の植物名称を不定期的に紹介していく。みなさんにとってもモンゴル語の語彙力を増やすのに少しでも役に立てば望外の喜びである。

文責:B@B