駐日大使に上申する「内モンゴルのみなさんを応援する」公開状

中華人民共和国駐日本国特命全権大使孔鉉佑閣下

中華人民共和国内モンゴル自治区教育庁より今年9月1日から同自治区において従来モンゴル語で授業を受けてきたモンゴル民族学校に対し、『全区民族言語教育における小学校1年生、中学校1年生から国家統一編集〈語文〉教材の使用を実施する方案』を実施し始めたことにより、全自治区のモンゴル族の大きな反響を巻き起こしている。多くの保護者らが法律の許容範囲で連名し、嘆願書の提出、子どもの登校拒否などの形で反発している。

それらの反発は、政府が実施してきた双語教育全般に向けられるものではなく、第2類双語教育、つまり従来のモンゴルで授業する全科目を順次国家統一言語、即ち漢語に切り替えることへの反発である。というのは、第2類双語教育が実施されれば、近い将来にモンゴル族の子どもたちは母語を失い、モンゴル伝統文化が継承できなくなるとして保護者らやモンゴル族全体が危惧しているからである。

『中華人民共和国憲法』(以下憲法と略す)第1章第4条に「中華人民共和国の諸民族は、一律に平等である。国家は、すべての少数民族の適法な権利及び利益を保障し、民族間の平等、団結及び相互援助の関係を維持し、発展させる。いずれの民族に対する差別及び抑圧も、これを禁止し」、「いずれの民族も、自己の言語・文字を使用し、発展させる自由を有し、自己の風俗習慣を保持し、又は改革する自由を有する」と規定している。また同第2章第33条には「中華人民共和国公民は、法律の前に一律に平等である。国家は、人権を尊重し、保障する」、同第35条に「中華人民共和国公民は、言論、出版、集会、結社、行進及び示威の自由を有する」と規定されている。

『中華人民共和国民族区域自治法』(以下、自治法と略す)第10条に「民族区域の自治機関は各民族が当該民族の言語文字を使用し、発展させる自由、または自己の風俗習慣を保持しまたはこれを改革する自由を保障する」と規定している。

中華人民共和国は諸民族の平等および共同繁栄を理念とする多民族国家として世界的に認知され、その国際的地位は非常に高い。習近平国家主席は「いかなる文明は自己生存の土壌に根ざしており、一つの国家、一つの民族の非凡な英知と精神的追及が凝縮し、すべてにおいて自己存在の価値を有している。人類は肌の色が違うのみで、文明は形態が異なるだけで、そこに優劣の違いはまったく存在しない」と述べた。それは中国における諸民族の言語、文化、精神追求はすべて同じ価値を有していることを意味し、憲法精神にも合致する崇高な訓示である。

したがって、内モンゴルにおけるモンゴル族は中国公民として憲法と自治区法の規定に基づき、第1類双語教育を選択し、第2類双語教育を拒否する権利がある。政府も公民の合法的な意見や提唱を尊重しなければならない。決して強要してはならない。もし強要すれば、憲法や自治法の規定を違反する恐れがあり、民族間の団結、協和を損ないかねない。

一方で、内モンゴルのモンゴル族は従来の第一類双語教育を支持し、その継続的実施を強く望んでいる。なぜなら、70年余のわたり、モンゴル族はこの教育モデルを支持してきたし、モンゴル族の人々は国家の繁栄、民族政策の完結のために誠心誠意に努め、大きく貢献したからである。

モンゴル族が第2類双語教育を受け入れない具体的な理由は単純明快である。つまり、ようやく母語が話せるようになったモンゴル族の子どもたちは漢語が分からないために精神的に大きな負担を感じ、学習意欲をなくす可能性が高く、さらに短い期間内で母語を忘れてしまうおそれがある。さらに言えば、牧畜区などに暮らす子供たちは漢語を身に付け、モンゴル語を忘れることによって、家族との間でさえコミュニケーションが難しくなり、伝統文化の継承が困難になり、モンゴル民族の未来が危惧されるのである。

日本で暮らしている中国公民としてのモンゴル族の人々や中国出身のモンゴル族の人々は憲法や自治区法を遵守し、習近平国家主席の訓示を尊重し、各民族間の団結や調和を図るために、以下のような嘆願書を上申したい。

一、憲法と自治法の規定により、第一類双語教育の継続実施を行うこと。

二、憲法と自治法の規定により、内モンゴル自治区の実情に合わない第二類双語教育を受け入れないこと。

三、憲法と自治法の規定により、モンゴル族の人々の提唱、要請を尊重し、『全区民族言語教育における小学校一年生、中学校一年生から国家統一編集〈語文〉教材の使用を実施する方案』の撤回を要求する。

在日モンゴル族の人々は、内モンゴル自治区における第2類双語教育を受け入れないというモンゴル族の正当な活動を支持することを、ここに声明したい。

在日モンゴル族一同

2020年8月29日

 

*映像は内モンゴルにおける学校の様子。ほとんどの保護者らは無言の抵抗として子どもたちを学校に通学させるのを拒否している。